室生犀星(むろうさいせい)

俳号魚眠洞。金沢生まれ。俳句や詩を学びながら放浪生活の後、詩誌「感情」を創刊。その後小説にも目覚め、詩人・小説家として活躍する。
主な作品には【愛の詩集】【抒情小曲集】【幼年時代】【あにいもうと】【杏っこ」などがある。

『馬込日記』谷中編 

(1892~1968)

室生犀星が馬込谷中へ越してきたのは昭和三年のこと。近くの文士たちとの行き来が多くなり、特に朔太郎とは親しくなって、
11月25日『萩原と交際するごとに酒のみになること受け合いなり』
と記しています。また、谷中は昔沼田だたので、健康上環境抜群とはいうわけにはいかず、11月30日『朝子風気味、・・夜、朝己もまた咳をする』
と、子供たちの健康を気づかっています。
その上、この家は二回も泥棒に入られたことがあると聞いて、強力な番犬を飼うことにしました。
12月14日「ブルドックは馬鹿のごとき面相なれど、記憶力探し」
家族サービスも怠りません。
12月22日「クリスマス・ツリイ、夕方千疋屋より配達し来る。子供ら大いに喜ぶ。この贈物は要を得たるがごとし」
やがて年も押し迫り、馬込で初の年越しの心境は、12月31日「貧乏のなかに正月を向かうべし、又一興」

参考文献 室生犀星【馬込日記】